【連載②】思考力はどうして必要?

私が所属する花まるグループ(主に5歳から10歳までを対象にした幼児教育の学習塾)では、子育てや教育についてこのように考えています。

子育ての最終的な目的はたった一つ、それは子どもを経済的、社会的、精神的に自立した「自分でメシを食っていける大人」にすること。自立した「メシが食える大人」になることで、受験や社会に出てからの様々な苦労を乗り越え、より幸せな将来を生きていくことができる。

そのためのカギとなる大切な力が、思考力なのです。

なぜ自立するために思考力が大切なのでしょうか。

自立する、ということは自分で、人生で起こる諸問題に立ち向かうということです。人生で起こる諸問題に立ち向かうためには、そのための解決策を考える必要があります。人工知能を始めとする技術が人の生活に大きく貢献することになっても、人が全く考えなくていい世の中には、少なくとも今の子どもたちが社会に出て活躍するまでには訪れないでしょう。

日常生活の中で誰もが思考、すなわち「考える」ということを常に、普通に行っています。
だからこそ、「考える」ことの質が、人がどれだけ自らの課題に立ち向かい、人生を充実したものにできるかに大きくかかわってくるのです。

質の高い思考を有機的にまとめあげ、積み上げることは、もちろん仕事上の問題を効率的で本質を突いた形で解決することにも繋がっています。

しかしそれだけではなく、日々の新しい感動も、「ああ、新緑がきれいだな」だけではなくて、「新緑がきれいだな、ああ、季節は移り変わりつつあるんだ…」と情報を束ねて捉えられると、一段と深いものになるでしょう。

まだ見ぬ答えを求めて考えをまとめあげ、一つ一つ積み上げていく面白さ、課題に対してさあどうしようかなと楽しみながら取り組む面白さを子どもたちに知ってもらい、そのための力を蓄えてもらいたい。そんな気持ちで私たちは日々子どもたちに向き合っています。

子どもが新しい問題にぶつかった時によく言う言葉があります。

「この問題、まだ習ってないよ」

それに対して、私たちはこう答えます。

「君の人生、この先ずっと習ってないことだらけだよ」

思考力とは、「見たことのない課題に立ち向かい、自ら人生を切り拓いていく力」のことだと思うのです。

この思考力の重要性は、意識的にしろ無意識的にしろ、多くの学校や企業で共有されています。

幼稚園入試から就職・転職まで、全てのライフステージを通じて重要な場面で思考力が問われることが多いのはそのためです。中学入試でいえば、難関校ほど問題のパターン暗記にとどまらず、見たことのないような問題の解決能力を見るような問題が出題される比率が増えていきます。就職試験ならば、多くの企業が答えのない問題に対して解決策を問うたり、グループディスカッションで異なる意見を持った相手と共にいかに結論までたどり着くかを見たりして、その人の能力を測ろうとするのです。

社会に出てからは、さらに思考力が必要とされる場面が増えます。仕事とは言ってしまえば課題解決の連続です。仕事の外でも、常に自らの人生の課題に前向きに向き合い、自分の答えを出してゆかねばなりません。

課題にまつわる情報を束ね、一つ一つ思考を積み重ねて、日々ワクワクしながら取り組んで行く。
このような思考力こそ、「メシが食える」「魅力的である」人の必要にして十分な条件なのではないでしょうか。

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川島 慶

川島 慶

代表取締役株式会社 花まるラボ
栄光学園中学・高等学校 出身、東京大学卒業。2011年に(株)こうゆう(花まる学習会)入社。公立小学校や児童養護施設、海外孤児院等の学習支援や教員研修を多数手掛ける。 2014年に(株)花まるラボを設立。東京大学非常勤講師を務める。 2015年から算数オリンピックの問題作成・解説担当し、2016年からは世界最大のオンライン算数大会「世界算数」問題作成を担当。 花まる学習会代表 高濱正伸との共著に、算数脳パズルなぞぺーシリーズ「迷路なぞぺー」「新はじめてなぞぺー」「絵なぞぺー」などがある。